問題社員を辞めさせる方法 不当解雇とならないために

働き方に問題のある社員をそのまま放置しておくと,企業の生産性が落ちるばかりか周囲の従業員の働き方にも悪影響を与えてしまい,職場環境が悪化してしまいます。そのため,早めに手を打っておきたいと考えられる経営者の方は多いと思います。

しかし,日本では解雇のルールが非常に厳しく,法律を踏まえた慎重な対応をしていかなければ逆に訴えられてしまうリスクがあります。
この記事では,解雇の法律上のルールの確認と,問題社員を解雇するための適切な手順を解説していきたいと思います。

1.不当解雇であると判断されたときのリスク

まず,解雇するための適切な手順を踏まず,不当解雇であると判断されてしまったときに,会社側にどういった法的リスクがあるのかを知っておきましょう。

1.1問題社員を職場に復帰させなければならないリスク

解雇が無効であると判断されると,従業員との間の労働契約はいまだ継続していることになります。そのため,従業員が望むのであれば職場復帰させなければなりません。

職場復帰させないようにしても,従業員が労務を提供し続けている間は,雇用契約が継続しているのに会社側が労務の提供を妨げているとして,会社側に賃金を支払う義務が生じてしまいます(民法536条2項)。

1.2バックペイを支払わなければならないリスク

バックペイというのは,解雇時から復職時までの未払賃金のことを指します。解雇が無効で労働契約は継続したままだったと判断されると,会社側の無効な判断により解雇期間中労務を提供することができなかったということになります。

だいたい半年から1年分の未払賃金を請求されることになってしまいます。

1.3企業イメージの低下のリスク

現代はSNSが発達しておりますので,不当解雇に関する一連の事実が,ネット上に掲載され拡散されてしまうと,企業イメージが低下してしまう危険性があります。

2.解雇に関する法的ルール

上記のような不当解雇のリスクを避けるために,解雇に関する法律上のルールを抑えておきましょう。 問題社員を解雇するにあたって気を付けなければならないルールは,大きく分けて次の3点になります。

  1. 解雇予告義務(労基法20条)
  2. 就業規則や労働協約等で解雇事由を定めているか
  3. 解雇に客観的合理的な理由があること,社会通念上相当性があること(労働契約法16条,いわゆる解雇権濫用法理)

2.1 解雇予告義務について

会社が従業員を解雇する場合,少なくとも30日前に予告をしなければならないとされています。これは,従業員に再就職活動等のための時間的余裕を与えるためです。即日解雇をするためには,30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません。

解雇予告手当を支払わなくてもいいケースとして,労働者の責に帰すべき事由に基づき解雇する場合があります(労働基準法20条1項但書)。

しかし,このような例外的取り扱いが認められるのは,労働者側に業務上横領,重大な経歴詐称,長期にわたる無断欠勤等重大な労働契約上の違反があった場合に限られます。懲戒解雇となるような場合であっても,必ずしも解雇予告手当の支払い義務がなくなるわけではない点に注意しましょう。

2.1.1解雇予告か?即時解雇をしたほうがいいのか?

では,解雇予告をして解雇日まで働かせたほうがいいのか,それとも解雇予告手当を支払って即時解雇したほうがいいのか,どちらがいいのでしょうか。

迷われるかもしれませんが,解雇予告をした従業員にそのまま1ヶ月ほど仕事を続けさせることは,情報漏洩のリスクや業務効率の低下等の問題があり,現実的に難しいものと思われます。

したがって,解雇予告手当を支払うことになったとしても基本的には即時解雇をしたほうがいいでしょう。

2.2 就業規則や労働協約等による解雇規制について

常時10人以上の労働者を使用する会社は,就業規則を定め労働基準監督署に届けなければならないとされています。就業規則の中には,どういった場合に解雇となるのか明確に定めておく必要があります(労働基準法89条3号)。就業規則で定めた解雇事由に該当しない限り解雇を行ってはならないというのが一般的な理解です(限定列挙説)。

解雇の中でも従業員の重大な業務命令違反等を理由とする懲戒解雇は,企業秩序を乱したことに対する制裁罰としての懲戒処分です。刑罰に似たところがあるため,より厳格に就業規則等でどういった場合に懲戒処分を受けるのかを明確に定め,事前にそれを従業員に周知しておくことが必要であるとされています。

2.3 解雇権濫用法理について

解雇予告義務を守り,就業規則に解雇事由を定めていたとしても,解雇が有効と認められるためには,①解雇について客観的合理的理由があること②解雇が社会通念上相当性を有することが必要とされています。

まずは,問題社員の行動が就業規則に定められている解雇事由に該当するか,懲戒解雇をする場合には懲戒事由に該当するのか検討しましょう。
懲戒解雇の場合には,さらに懲戒解雇を選択することが相当なほど重大な企業秩序違反行為があったのかの検討が必要となります。

解雇の社会的相当性とは,簡単に説明すると,従業員の問題行動が重大で,注意により改善を求めたり,異動・降格などの人事措置や懲戒処分により対処してきたが,もはや解雇する以外に方法はないという状況のことを指しています。つまり,解雇は最終手段として行使すべきであるということです。

懲戒解雇の場合には,さらに従前の他の社員に対する処分との均衡を考えたり,過去の懲戒処分を受けた行為を蒸し返してはならなかったり(一事不再理の原則)と,普通解雇よりも相当性の判断が厳しくなっています。

懲戒解雇の手続きが普通解雇よりも厳しいのは,退職金が支給されなくなったり,再就職にも響いたりと,労働者にとっての不利益が非常に大きいためです。

3 問題社員を解雇するうえで必要な手順

上記のような法的ルールを踏まえて,問題社員を解雇するための対応方法について解説していきます。

3.1 上司から注意や指導を行い,改善を求める

先ほど述べたように,解雇はあくまで最終手段です。まずは,注意や指導を根気強く行い,問題社員に対し業務の改善を求めていくことが必要です。

当たり前のことと思われるかもしれませんが,そういった注意や指導を繰り返していたのにもかかわらず,業務態度に全く改善が見られなかったという事実を積み重ねていくことは非常に重要です。その実績があるかないかが,不当解雇か否かの判断の分かれ目になったなんてことはよくある話です。

3.2 配置転換・降格などの人事上の措置をとる

注意や指導により業務態度に改善が見られない場合,業務効率の向上や職場の人間関係の改善などの業務上の必要性を理由に,人事上の措置として配置転換や降格といった業務命令を発することが次に有効です。

ただし,配転命令にしろ,降格命令にしろ,労働者の受ける不利益があまりにも大きい場合には人事権の濫用であると判断されてしまう可能性があります。事前に命令を発するにあたって労働者と個別面談してよく事情を説明しましょう。

3.3 懲戒処分を行う

従業員の問題行動が目に余る場合には,軽い懲戒処分から段階的に制裁を科すことも検討すべきです。

複数回懲戒処分を受けたにもかかわらず業務態度に改善が見られなかったという事実は,のちに懲戒解雇を行うにあたってその有効性を基礎づける事情となります。

3.4 自主退職を促していく退職勧奨

以上のような手段を尽くしてきたがもはや対処不能であるといった場合には,いよいよ解雇を具体的選択肢の一つとして検討していかなければならなくなります。

しかし,解雇が法的に有効と判断される状況であっても,問答無用で解雇とすると,根強い抵抗を受けたり不当な言いがかりをつけられたりする危険性があります。

まずは退職勧奨を行い,従業員の自主的な退職を促していきましょう。

3.4.4 退職勧奨のルール

退職勧奨は,解雇のように法的効果はなくあくまで労働者の自主退職を促す事実行為に過ぎないので,有効性に関する法律上の規定はありません。

しかし,従業員を精神的・肉体的に追い込み,退職強要に当たると評価されてしまうと,労働者の人格権を侵害するものとして不法行為となり損害賠償をしなければならなくなってしまいます。

次のような場合には,退職勧奨が退職強要にあたり違法と評価される可能性があるので注意しましょう。

  1. 従業員が,明確に退職勧奨に応じない意思を表明した後も退職勧奨を継続した場合
  2. 退職勧奨を繰り返し,長期にわたって執拗に実施した場合
  3. 仕事を与えず追い出し部屋のようなところに隔離するなどの嫌がらせをした場合
  4. 退職させるために,他の従業員の目の前でひどく叱責した場合
  5. 懲戒解雇事由がないにも関わらず,退職勧奨に応じなければ懲戒解雇となり退職金も出なくなると錯覚させた場合

なお,退職勧奨を行っても合意退職の形で解決できないのであれば,粛々と解雇の手続きを進めていくほかありません。

4. 解雇のことを弁護士に相談するメリット

このように,解雇の法律上のルールは非常に厳しく,様々な手順を踏んでいかなければ不当解雇とされ訴えられるリスクがあります。経営者の方が,普段の業務をこなしながら,裁判例や法律を調べて解雇の有効性を判断していくことは,非常に難しいと言っていいでしょう。

その点,弁護士であれば,問題社員のこれまでの行動や会社の個別具体的な事情を考慮し,多くの裁判例を踏まえた適切な対処方法を迅速に検討していくことが可能です。

また,当然のことながら,弁護士は,現状の事実関係や証拠が裁判所でどのように判断されるか熟知しています。そのため,弁護士は,解雇の問題が万が一裁判にまでもつれ込んだときにも,現状どのように交渉しておけば後々有利に進めていけるのかといった観点からの検討が可能です。

ガイア総合法律事務所では,解雇問題などの労働問題を熟知した弁護士が,問題社員に対する対応について専門的観点からアドバイスをさせていただきます。

問題社員への対応に苦慮されていらっしゃる経営者の方は,ぜひガイア総合法律事務所までご相談ください。紛争を未然に防ぐために全力でサポートさせていただきます。

 

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